【あだたらのちち株式会社】代表 千葉清美さんインタビュー

2019年1月に創業し、同年「ふくしまベンチャーアワード2019 最優秀賞」受賞。

 

2021年2月にも「第6回ふくしま産業賞特別賞」を受賞し、地元メディアだけでなく全国誌でも取り上げられるようになったこだわりのソフトクリーム「きよミルク」

 

そんなきよミルクを製造している「あだたらのちち株式会社」の社長 千葉清美さんに創業のきっかけについてお話をうかがいました。

 

※写真撮影時のみマスクを外しています。

神奈川から福島へ

もともと私は神奈川県に住んでいまして、2005年に主人の転職がきっかけで福島に引っ越すことになりました。

 

私は神奈川県出身で、生まれてからずっと横浜市に住んでいましたので福島には知り合いも友達もいませんでした。そんな頼れる人が誰もいないところに引っ越して生活を始めることになり、不安がありましたが、引っ越してすぐに福島が大好きになりました。

 

やっぱりこの、東京や横浜にはない自然豊かな風土、近所の住人の方もすごくウェルカムな感じで、しかも、食べ物がおいしい!水と空気がおいしい!って、すぐに大好きになって。
もう横浜には帰りたくない!と思い、あだたらの山のふもとに土地を買ってそこに家を建てたんです。

 

そうして、癒されて生活してたところに震災が起きて…。

ソフトクリームをつくろうと思ったきっかけ

震災が起きた後に農畜産業をやめる方がすごく増えて、そうしたら、家のすぐ横にソーラーパネルができたんです。その後もどんどん耕作放棄地が多くなって。

 

その時に私はすごく危機感を感じて、福島の財産である美しい田園風景がなくなってしまうと感じました。

 

何とかしなければと思いはじめた翌年に、実は私、病気で倒れたんです。
特殊な病気で、危険な状態になったんですけれども、ありがたいことに奇跡的に助かったんです。
そして、その3ヶ月後に私の姉の娘である姪っ子が19歳で突然亡くなりました。

 

私は「なんで彼女のように将来有望な子が亡くなって、私は助かったんだろう」とずっと考えていました。

 

そんな時に…、ちょっとスピリチュアルな話であれなんですけど。

 

姪っ子にゆかりのあるカフェに姉と行ったときに、最後にデザートでアイスクリームが出てきて、それを一口食べた時にものすごく美味しくて幸せな気持ちになったんです。
その時になんだか私に姪っ子が降りてきたような気がして、感覚的に姉に

「私はこういうおいしいアイスクリームを出すお店をやる」

って、言ってしまったんです。

 

私が生き残って姪っ子が亡くなったのには意味があって、私はやらなければいけないことがこの世の中にはあるんだ、無駄に生きててはいけないんだ、みたいな使命感が出てきて。

 

亡くなった姪っ子はパティシエになるのが夢で、今考えると、だから何となくそういうふうに感じたのかなと思います。

 

でも、なぜパティシエなのにソフトクリームなのかと言うと、 私が高校生の時に…もうだいぶ昔の話になるんですけど(笑)

 

その頃の高校生の男子は16歳になるとバイクの免許をとって女の子を後ろに乗せたい盛りで、一緒にソフトクリームを食べに行こうって誘われたんです。
それで、その時みんなでバイクに乗って向かったのが隣の隣の県の長野県で、とっても遠いところでした。

 

長い道のりを経て着いたところには小さな小屋があって、すごい長蛇の列なんです。
そこにはソフトクリームだけを食べにわざわざ他県からきた人たちがたくさんいて、駐車場には他県ナンバーのバイクや車がたくさんありました。

 

それで1時間並んで食べたときに、感動的な美味しさだったんです。こんなおいしいソフトクリーム食べたことがない!って。
だから口コミでこんなに人が来るんだ、って思いました。

それから私は多分、10回以上は行ったと思います。横浜から4時間かけて(笑)

 

そのとき、おいしいものを作れば遠くからでも何回も食べに来てくれるんだ、って思ったんです。
その記憶もあって、ソフトクリームを作ろうと思いました。

あだたらの田園風景と酪農の未来のために

おいしいソフトクリームを作ってあだたらの農畜産業を活性化させて、美しい田園風景を守りたい。
だから安達太良(あだたら)地域の生乳を使うことにこだわっています。

ソフトクリームも普通においしい位だったらお客様はそんなに来ないから、感動的においしいもの、そして体に良いもの。

 

そういうものを作れば遠くからでも、例えば東京や横浜からでもお客さんが何回も来てくれて、そうしたら福島の温泉に泊まって、お土産を買ってくれて、 福島でいっぱいお金を使ってくれるかなって(笑)

 

あとは、やっぱり若い人に「きよミルク」を食べてもらった時に「農畜産て可能性があるんだな」と感じて欲しい。

 

継承されなければすべての産業は断ってしまうわけですが、特に農畜産業を継ぐ若者はほとんどいなくて、もうだいぶ辞めてしまっている。

 

これは震災だけが原因ではなくて、高齢化と継承者不足による廃業の傾向があった中に震災があって、その影響をきっかけにやめようと言う人が一気に増えただけで、やめる人はずっと増えている。

それを食い止めるためには、まずは若い人たちになんとか農畜産業に関心を持ってもらって、可能性を感じてもらったり、継ぎたいとかやってみたいと思ってもらう。

そうすることができれば美しい田園風景は未来につながっていくんではないかという、ほんとに淡い期待を持っています。

 

私が「きよミルク」を作ったところで、それはほんとに夢というか、その願いは叶うわけではないし、そんな甘いものではないという事はわかっています。
けれども、大きな病気を経験したこともあって、何もしないでどうしようと嘆いているよりも何かを始めたいと思いましたので、ソフトクリームを通して自分にできることをやっていきたいと思っています。

 

やっていてよかったなと思うのは、お客さんに直接販売をして、おいしいと言ってもらえた時ですね。「きよミルク」を食べて、「おいしい」と言ってもらう言葉は「私のエサ」みたいなものなんです。(笑)

 

それが私の喜びで、辛いことがあってもそれがあるから頑張っています。

創業から3年経った今、思うこと

販路探しがうまくいかなかった時期に、いろいろな方々からさまざまなご意見をいただくなかで、一時期は「きよミルク」の製造方法について迷うこともありました。

 

最終的に創業時につくった経営理念に基づいて行動し、今があります。

 

もう迷うことはありませんが、あの時は経営理念があって本当によかったと思いました。

 

きよミルクの理念
1. 圧倒的においしいこと
2. 体に安全・安心であること
3. あだたら地域の生乳を使用すること
4. 地域に貢献すること
5. 命を分けてくれる牛さんに感謝し、生乳本来の味を大切にして
心を込めて作ること
6. 酪農家さん、作る人、販売する人、食べるお客様、
みんなが喜ぶものであること

 

創業から3年が経ち目線が変わってきたこともあって、新しく考えることも増えました。

 

例えば、一番大事な原料だと思っている生乳がどうやって作られているんだろう、と思ったのがきっかけでアニマルウェルフェア(動物福祉)に出会いました。

 

ヨーロッパをはじめ海外ではすでにある程度普及している考え方ですが、日本ではアニマルウェルフェアという言葉を知らない方も多く、まだまだこれからだという現状があります。

 

人間に様々な利益をもたらしてくれる畜産動物が、その生涯を健康的に暮らすことができるようにすることは必要なことだと思いますし「もし自分が畜産動物だったらどうなんだろう?」
というような目線を持って考えることが大事だなと思っています。

 

私は酪農家ではないですし、実際に何ができるのかは分かりませんが、まずはこれからアニマルウェルフェアについてきちんと勉強し、知ることから始めていきたいと思っています。

findふくしまより

「子供はピュアだから、 アイスを食べながら帰るときに『うまーい!!』とか、大きな声で言いながら帰ったりするんです。それを聞くのが好きで、小さな子供が来た時は販売後に窓を1度閉めるけれど、少しだけ開けてちょっと待ってる、喜んでくれてる言葉が聞きたくて。 それが聞けると、あー!やっててよかった!と思うんです。」

 

ニコニコと笑いながらお話される千葉さんを見て、「きよミルク」にはそんな人柄がとてもよく反映されているんだと感じました。

 

「きよミルク」は現在、人気の高まりに生産が追いつかなくなってきており、より多くのひとに食べてもらえるよう少しづつ増産に向けての準備を進めています。

 

将来的にはあだたらの生乳を使ったバターやチーズ、焼き菓子なども作りたいとお話されていましたので、千葉さんのこだわりからどんな美味しいものが生まれてくるのか、今から楽しみです。

 

findふくしまでは、数量・出荷日限定で「きよミルク」を販売しています。
ぜひ、いままでにない濃厚なあだたらの生乳アイスクリームをお試しください。

きよミルクの紹介はこちらから

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